「しょうがい」の表記について

アーサでは「しょうがい」の表記に関して、「障害者自立支援法」などの固有名詞を除き「障がい」と表記することを心がけています。障害の表記に関しては様々な考え方があり、社会モデルの立場からあえての字を使う方がいいという考えも存在していますが、アーサでは人に対しての字を使うのは避けた方がいいだろうという立場をとっています。

この障害という表記に関する議論については、いろいろな主張があるので代表的な考え方について紹介させていただきます。

表記に対する考え方

  • 障害

「害」は「公害」、「害悪」、「害虫」の「害」であり、当事者の存在を害であるとする社会の価値観を助長してきたという主張(個人モデル)がある一方、障害とは個人ではなく社会にあるという考えから「障害物」「障壁」によって障害者となっている、障害者とは「社会にアクセスする(障る)のにハンデ(害)がある者」という主張(社会モデル)があります。こうした、社会モデルを唱える人たちの中には、社会にある障壁に目を向ける為にも害の字を使用した方がいいという考え方が存在します。

  • 障碍

もともとは、仏教用語で「しょうげ」と読み「さまたげるもの」の意。「碍」は「カベ」 を意味する言葉です。社会が「カベ」を形成しているという考え方がある一方、常用漢字ではないことから一般的な使用頻度・認知度は低くなっています。

また、もともとの意味自体がいい意味ではないので害を碍に変えても意味がないという主張が存在します。

  • 障がい

「害」の負のイメージを払拭するために、一部自治体や企業が自主的に使用するようになり広がった表記方法ですが、平仮名の「がい」では実体が見えず障害の社会性を曖昧にするという意見も存在します。

  • その他表記方法

「チャレンジド」「要支援者」

近隣市町村の表記について

神戸市:障がい者・障害者(「がい」と「害」が混在)

明石市:障害者

三田市:障害者

宝塚市:障碍者(東京五輪を見据えて2019年に「障碍」表記に統一)

芦屋市:障がい者(「がい」で統一。2015年ごろから?)

表記を変えれば社会が変わる?

先日、ラジオを聴いていて八百屋という言葉が放送禁止用語(自主規制)になっているということに、驚きを覚えました。「~屋」は差別的、見下しているニュアンスが含まれているからということらしいです。ちなみに、八百屋は青果店となるそうです。また、「白雪姫と7人の小人」は「白雪姫と7人の仲間たち」といった表現になっているそうです。

障がいの「害」など、その言葉を聞いて不快に感じる方がいるのであれば、表現を変えていく必要はあるかと思いますが、自主規制の名のもとに不必要な言葉狩りが行われているのではないでしょうか。

こうした行き過ぎた自主規制による表記変更は、社会モデルの立場から「害」と表記した方が良いと考える人たちが主張するように、問題の本質を隠しているだけではないでしょうか。なぜ、表記を変更するのか、また、表記を変更した方がいいという意見があるのかについて、しっかりと自分で調べ・考えたうえで、今まで通りの表記を使うのか、それとも表記を変更するのかについて個人個人が判断する必要があるのではないでしょうか。

昨今の社会の空気から「障がい」という表記を安易に選ぶのではなく、背景にある議論や主張をきちんと受け止めたうえでどの表記を使用するのが良いのかを各々で判断してもらえたらと思います。アーサでは「障害」の考え方に関して社会モデルの立場に立ってはいますが、それでも人に対しての字は使うのは避けた方が良いという判断から「障がい」を使用しています。

広報課長 奥秋克海